ばくまついしんかいこだん 35 じつぶつしゃせいということのはなし
幕末維新懐古談 35 実物写生ということのはなし

冒頭文

明治八、九年頃は私も既に師匠の手を離れて仏師として一人前とはなっておりましたが、さて、一人前とは申しながら、まだ立派に世に立つに到(いた)ったとはいえない。師匠の家は出たけれども、自分の家(うち)から師匠の家に通って仕事をしておりました。 ところが、その時分は前に話した通り仏教破壊のあおりを食って仏に関係した職業は何事によらず散々な有様でありますから、したがって仏師の仕事も火の消えたよう

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 幕末維新懐古談
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1995(平成7)年1月17日第1刷