ばくまついしんかいこだん 17 ねことねずみのはなし
幕末維新懐古談 17 猫と鼠のはなし

冒頭文

少し変った思い出ばなしをします。鼠の話を先にしましょう。 私が十五、六歳の時です。師匠の手元にいて、かれこれ二、三年も稽古(けいこ)をしたお蔭(かげ)で、どうやら物の形が出来るようになって来ました。それで、そろそろ生意気になって、何か自分では一廉(ひとかど)の彫刻師になったような気持で、師匠から当てがわれた仏様の方をやるのは無論であるが、それだけではたんのう出来ないような気持で、何か自分

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 幕末維新懐古談
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1995(平成7)年1月17日