みずいろじょうちょ |
水色情緒 |
冒頭文
鏡花先生の御作を私が好きだつた理由は、魂を無何有の郷へ拔いていつて貰へることでした。私達が心に感じて行ふ事の出來ない萬事を、先生の作中の人物は、小氣味よくやつて退けてくれる——勿論、そこにはすべてを魅了しつくしてしまふ大きな力があるのは分りきつてゐますが——そこが私たちの先生でなければならない所でした。花川戸の助六も、幡隨院の長兵衞も、男だから私たち女には溜飮を下げてはくれない、そこへ行つて先生は
文字遣い
旧字旧仮名
初出
「鏡花全集 第十三卷月報」岩波書店、1941(昭和16)年6月
底本
- 鏡花全集 月報
- 岩波書店
- 1986(昭和61)年12月3日