せっぷん
接吻

冒頭文

五月二十日の晩の八時のこと、N予備砲兵旅団の六個中隊が全部、野営地へ赴く途中で、メステーチキという村に一泊すべく停止した。砲のまわりで世話をやくのに忙がしい将校があるかと思えば、馬を飛ばして協会の柵のほとりの広場へ集合して、宿舎係の説明に聴き耳を立てている将校もあるという、てんやわんやの真最中に、教会のかげから、馬にまたがった平服の男が一人姿を現わしたが、その乗っている馬がまた一風変った代物だった

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • チェーホフ全集 7
  • 中央公論社
  • 1960(昭和35)年6月15日