しのしょうらいについて
詩の将来について

冒頭文

こゝに掲げた標題が私に課せられた難問である。私は答案に窮するより外はない。 近頃は社會萬般に亙つて何事も見透しがつきかねるといふ噂さである。詩も多分さうであらうことは、この出題によつても推測されるとほりに、私にも少しばかり思當りがないでもない。囘顧すれば自由詩が舊詩壇に取つて代つてから既に三十年にもなる。その上たとへ物々しい理論の矛を揮つたとはいへ、また多數の同士を率ゐたとはいへ、その登

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「文藝懇話會」1937(昭和12)年4月

底本

  • 明治文學全集 99 明治文學囘顧録集(二)
  • 筑摩書房
  • 1980(昭和55)年8月20日