げきだんのしんきうん
劇壇の新機運

冒頭文

わたくしは劇壇の新しい運動が自由劇場の試演とまで漕ぎつけたことに就ては、勿論贊意を表し且つその成功を祈つてゐた。それと同時にかういふ運動は我邦に於て全く破天荒のことではあるし、第一囘の試演が蓋を開けるまではこの運動の効果に對し多少の疑懼を擁かないでもなかつた。即ち成功とは云はれぬにしても、劇壇の沈滯に對する刺戟ともなり、新藝術のために貢獻するところを期待しつゝ、果してそれがどうであらうかと、傍から

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「新潮」1910(明治43)年1月

底本

  • 明治文學全集 99 明治文學囘顧録集(二)
  • 筑摩書房
  • 1980(昭和55)年8月20日