そめちがえ
そめちがへ

冒頭文

時節は五月雨(さみだれ)のまだ思切(おもいきり)悪く昨夕(ゆうべ)より小止(おやみ)なく降りて、欞子(れんじ)の下(もと)に四足踏伸ばしたる猫(ねこ)懶(ものう)くして起(た)たんともせず、夜更(よふけ)て酔はされし酒に、明(あけ)近くからぐつすり眠り、朝飯(あさめし)と午餉(ひるめし)とを一つに片付けたる兼吉(かねきち)が、浴衣(ゆかた)脱捨てて引つ掛くる衣は紺(こん)にあめ入の明石(あかし)、

文字遣い

新字旧仮名

初出

「新小説」1897(明治30)年8月5日

底本

  • 舞姫・うたかたの記 他三篇
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1981(昭和56)年1月16日