むしゅみ
無趣味

冒頭文

この、三鷹(みたか)の奥に移り住んだのは、昨年の九月一日である。その前は、甲府の町はずれに家を借りて住んでいたのである。その家のひとつきの家賃は、六円五十銭であった。又その前は、甲州御坂峠(みさかとうげ)の頂上の、茶店の二階を借りて住んでいたのである。更にその前は、荻窪(おぎくぼ)の最下等の下宿屋の一室を借りて住んでいたのである。更にその前は、千葉県、船橋の町はずれに、二十四円の家を借りて住んでい

文字遣い

新字新仮名

初出

「新潮」1940(昭和15)年3月1日

底本

  • 太宰治全集10
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1989(平成元)年6月27日