つちのなかからのはなし |
| 土の中からの話 |
冒頭文
私は子供のとき新聞紙をまたいで親父に叱られた。尊い人の写真なども載るものだから、と親父の理窟であるが、親父自身そう思いこんでいたにしても実際はそうではないので、私の親父は商売が新聞記者なのだから、新聞紙にも自分のいのちを感じていたに相違ない。誰しも自分の商売に就てはそうなので、私のようなだらしのない人間でも原稿用紙だけは身体の一部分のように大切にいたわる。先日徹夜して小説を書きあげたら変に心臓がド
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 桜の森の満開の下
- 講談社文芸文庫、講談社
- 1989(昭和64)年4月10日