ほしみせ
露肆

冒頭文

一 寒くなると、山の手大通りの露店(よみせ)に古着屋の数が殖(ふ)える。半纏(はんてん)、股引(ももひき)、腹掛(はらがけ)、溝(どぶ)から引揚げたようなのを、ぐにゃぐにゃと捩(よじ)ッつ、巻いつ、洋燈(ランプ)もやっと三分(さんぶ)心(しん)が黒燻(くろくすぶ)りの影に、よぼよぼした媼(ばあ)さんが、頭からやがて膝(ひざ)の上まで、荒布(あらめ)とも見える襤褸頭巾(ぼろずきん)に包(くる)

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 泉鏡花集成4
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1995(平成7)年10月24日