一 ブロッケンに登つて、麓のシールケに泊つた次の朝、おびただしい鈴の音で目をさまされた。寢臺から這ひ出して窓をあけて見ると、下の川沿ひの道を一人の牧人が、牧場へであらう、牛の群をつれて通つてゐた。これを見ないとハルツの旅の氣分は完成しないやうな氣がしたので、L公使と谷口君の寢室のドアを叩かうかと思つたが、昨日はベルリンからハルツまで車で搖られ通しで疲れて眠つてるのだらうと思ひ、やめにした。