一 つれの夫人がちょっと道寄りをしたので、銑太郎(せんたろう)は、取附(とッつ)きに山門の峨々(がが)と聳(そび)えた。巨刹(おおでら)の石段の前に立留まって、その出て来るのを待ち合せた。 門の柱に、毎月(まいげつ)十五十六日当山説教と貼紙(はりがみ)した、傍(かたわら)に、東京……中学校水泳部合宿所とまた記してある。透(すか)して見ると、灰色の浪を、斜めに森の間(なか)にかけたような、棟の下