やまでらのかい
山寺の怪

冒頭文

宿の主将(ていしゅ)を対手(あいて)にして碁(ご)を打っていた武士は、その碁にも飽(あ)いて来たので主翁を伴(つ)れて後(うしろ)の庭へ出た。そこは湯本温泉の温泉宿であった。摺鉢(すりばち)の底のような窪地(くぼち)になった庭の前には薬研(やげん)のように刳(えぐ)れた渓川(たにがわ)が流れて、もう七つさがりの輝(かがやき)のない陽(ひ)が渓川の前方(むこう)に在る山を静(しずか)に染めていた。山

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 伝奇ノ匣6 田中貢太郎日本怪談事典
  • 学研M文庫、学習研究社
  • 2003(平成15)年10月22日