とうきょうにうまれて
東京に生れて

冒頭文

変化の激しい都会 僕に東京の印象を話せといふのは無理である。何故といへば、或る印象を得るためには、印象するものと、印象されるものとの間に、或る新鮮さがなければならない。ところが、僕は東京に生れ、東京に育ち、東京に住んでゐる。だから、東京に対する神経は麻痺し切つてゐるといつてもいゝ。従つて、東京の印象といふやうなことは、殆(ほと)んど話すことがないのである。 しかし、こゝに幸せな

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 心にふるさとがある17 わが町わが村(東日本)
  • 作品社
  • 1998(平成10)年4月25日