いせのまき
伊勢之巻

冒頭文

昔男と聞く時は、今も床(ゆか)しき道中姿。その物語に題は通えど、これは東(あずま)の銭なしが、一年(ひととせ)思いたつよしして、参宮を志し、霞(かすみ)とともに立出でて、いそじあまりを三河国(みかわのくに)、そのから衣、ささおりの、安弁当の鰯(いわし)の名に、紫はありながら、杜若(かきつばた)には似もつかぬ、三等の赤切符。さればお紺の婀娜(あだ)も見ず、弥次郎兵衛(やじろべえ)が洒落(しゃれ)もな

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 泉鏡花集成4
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1995(平成7)年10月24日