ばんちょうさらやしき
番町皿屋敷

冒頭文

一 「桜はよく咲いたのう」 二十四五歳かとも見える若い侍が麹町(こうじまち)の山王(さんのう)の社頭の石段に立って、自分の頭の上に落ちかかって来るような花の雲を仰いだ。彼は深い編笠(あみがさ)をかぶって、白柄(しろつか)の大小を横たえて、この頃流行(はや)る伊達羽織(だてばおり)を腰に巻いて、袴(はかま)の股立(ももだ)ちを高く取っていた。そのあとには鎌髭(かまひげ)のいかめしい鬼奴(

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 怪奇・伝奇時代小説選集13 四谷怪談 他8編
  • 春陽文庫、春陽堂書店
  • 2000(平成12)年10月20日