りょうりばんとじょちゅうのすがた
料理番と婢の姿

冒頭文

彼女は裏二階の階子段(はしごだん)をおりて便所へ往った。郊外の小さな山の上になったその家へは、梅の咲くころたまに呼ばれることはあるが、夜遅くしかも客と二人で来て泊まって往くようなことはなかったので、これまではなんとも思わなかったが、独りで便所へ往くとなるとさびしかった。彼女は婢(じょちゅう)が来たなら便所の判らないようなふりをしていっしょに傍まで往ってもらおうと思ったが、婢はこうした二人伴(づれ)

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 伝奇ノ匣6 田中貢太郎日本怪談事典
  • 学研M文庫、学習研究社
  • 2003(平成15)年10月22日