鞠唄 仙冠者 野衾 狂言 夜の辻 仮小屋 井筒 重井筒 峰の堂 鞠唄 一 二坪に足らぬ市中(まちなか)の日蔭の庭に、よくもこう生い立ちしな、一本(ひともと)の青楓(あおかえで)、塀の内に年経たり。さるも老木(おいき)の春寒しとや、枝も幹もただ日南(ひなた)に向いて、戸の外にばかり茂りたれば、広からざる小路の中を横ぎりて、枝さきは伸びて、やが