せいだんじゅうにそう
政談十二社

冒頭文

一 東京もはやここは多摩の里、郡の部に属する内藤新宿の町端(まちはずれ)に、近頃新開で土の色赤く、日当(ひあたり)のいい冠木門(かぶきもん)から、目のふちほんのりと酔(えい)を帯びて、杖を小脇に、つかつかと出た一名の瀟洒(しょうしゃ)たる人物がある。 黒の洋服で雪のような胸、手首、勿論靴で、どういう好みか目庇(まびさし)のつッと出た、鉄道の局員が被(かぶ)るような形(かた)なのを、

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 泉鏡花集成2
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1996(平成8)年4月24日