げっこうのした
月光の下

冒頭文

空には清光(せいこう)のある夏の月が出て、その光に染められた海は広びろと蒼白(あおじろ)い拡(ひろ)がりを持って静かに湛(たた)え、数日前(ぜん)大海嘯(おおつなみ)を起して、数万の人畜の生命を奪った恐ろしい海とは見えなかった。 そこは陸中(りくちゅう)の某(ある)海岸であった。一人の壮(わか)い漁師は沙丘(すなやま)の上に立って、悲しそうな眼をして海のほうを見おろしていた。漁師は同棲し

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 伝奇ノ匣6 田中貢太郎日本怪談事典
  • 学研M文庫、学習研究社
  • 2003(平成15)年10月22日