いわなのかい |
岩魚の怪 |
冒頭文
村の男は手ごろの河原石を持って岩の凹(くぼ)みの上で、剥(は)いだ生樹(なまき)の皮をびしゃびしゃと潰(つぶ)していた。その傍(そば)にはまだ五六人の仲間がいて潰した皮粕(かわかす)を円(まる)めて笊(ざる)の中へ入れたり、散らばっている樹(き)の皮を集めてその手許(てもと)に置いてやったりした。 そこは木曾(きそ)の御嶽(おんたけ)つづきの山の間で、小さな谷川の流れを中にして両方から迫
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 伝奇ノ匣6 田中貢太郎日本怪談事典
- 学研M文庫、学習研究社
- 2003(平成15)年10月22日