かいじょうはつでん
海城発電

冒頭文

一 「自分も実は白状をしやうと思つたです。」 と汚れ垢着(あかつ)きたる制服を絡(まと)へる一名の赤十字社の看護員は静に左右を顧(かえり)みたり。 渠(かれ)は清国(しんこく)の富豪柳氏(りゅうし)の家なる、奥まりたる一室に夥多(あまた)の人数(にんず)に取囲まれつつ、椅子(いす)に懸りて卓(つくえ)に向へり。 渠を囲みたるは皆軍夫(ぐんぷ)なり。 その十数名

文字遣い

新字旧仮名

初出

「太陽」第二巻第一号、1896(明治29)年1月

底本

  • 外科室・海城発電
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1991(平成3)年9月17日