なんごくたいへいき
南国太平記

冒頭文

呪殺変 高い、梢の若葉は、早朝の微風と、和やかな陽光とを、健康そうに喜んでいたが、鬱々とした大木、老樹の下蔭は、薄暗くて、密生した灌木と、雑草とが、未だ濡れていた。 樵夫(きこり)、猟師でさえ、時々にしか通らない細い径(みち)は、草の中から、ほんの少しのあか土を見せているだけで、両側から、枝が、草が、人の胸へまでも、頭へまでも、からかいかかるくらいに延びていた。 その細径

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 直木三十五作品集
  • 文藝春秋
  • 1989(平成元)年2月15日