ぼうしのないすいへい
帽子のない水兵

冒頭文

まだ横須賀行の汽車が電化しない時のことであった。夕方の六時四十分比(ごろ)、その汽車が田浦を発車したところで、帽子を冠(かぶ)らない蒼(あお)い顔をした水兵の一人が、影法師のようにふらふら二等車の方へ入って往った。 (またこの間の水兵か) それに気の注(つ)いた客は、数日前にもやはりそのあたりで、影法師のようなその水兵を見かけていた。その時二等車の方から列車ボーイが出て来た。 「

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 伝奇ノ匣6 田中貢太郎日本怪談事典
  • 学研M文庫、学習研究社
  • 2003(平成15)年10月22日