にげていくひとだま
遁げて往く人魂

冒頭文

二人の仕事師が某夜(あるひ)夜廻りに往っていると、すぐ眼の前でふうわりと青い火が燃えた。二人は驚いて手にしていた鳶口(とびぐち)で、それを敲(たた)こうとすると、火の玉は吃驚(びっくり)したように向うの方へ往った。 二人は鳶口を揮(ふ)りながら追っかけた。そして、数町(すうちょう)往ったところで、その火の玉は唯(と)ある巷(ろじ)へ折れて、その突きあたりの家の櫺子(れんじ)窓からふわふわ

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 伝奇ノ匣6 田中貢太郎日本怪談事典
  • 学研M文庫、学習研究社
  • 2003(平成15)年10月22日