かんざしにつけたたんざく |
簪につけた短冊 |
冒頭文
日本橋区(く)本町(ほんちょう)三丁目一番地嚢物(ふくろもの)商鈴木米次郎方の婢(じょちゅう)おきんと云うのが、某夜(あるよ)九時すぎ裏手にある便所へ入ろうとして扉をあけると、急に全身に水を浴びせられたようにぞっとして、忽(たちま)ち頭の毛がばらばらと顔の上へ落ちて来てまるで散髪頭のようになった。婢は悲鳴をあげて隣家の曲淵方(まがりぶちかた)へ駈け込むなり、ばったり倒れて気絶してしまった。人びとは
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 伝奇ノ匣6 田中貢太郎日本怪談事典
- 学研M文庫、学習研究社
- 2003(平成15)年10月22日