かめのこをにぎったまま
亀の子を握ったまま

冒頭文

岩手県の北上川の流域に亀ヶ淵と云う淵があったが、そこには昔から大きな亀が住んでいて、いろいろの怪異を見せると云うので夜など往くものはなかった。 その亀ヶ淵の近くに小学校の教員が住んでいた。それは、伝兵衛と云う中年の男であったが、それが初秋の比(ころ)、夕飯の後で北上川の網打ちに往って、彼方此方と網を入れてみたが、不思議に何も獲(と)れなかった。伝兵衛は漁のない腹だたしさと、酒の酔いもいく

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 伝奇ノ匣6 田中貢太郎日本怪談事典
  • 学研M文庫、学習研究社
  • 2003(平成15)年10月22日