かのじょのあさ
かの女の朝

冒頭文

K雑誌先月号に載ったあなたの小説を見ました。ママの処女作というのですね、これが。ママの意図(いと)としては、フランス人の性情(せいじょう)が、利に鋭いと同時に洗練された情感と怜悧(れいり)さで、敵国の女探偵を可愛(かわ)ゆく優美に待遇する微妙な境地を表現したつもりでしょう。フランス及(およ)びフランス人をよく知る僕(ぼく)には——もちろんフランス人にも日本人として僕が同感し兼(か)ねる性情も多分(

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 愛よ、愛
  • パサージュ叢書、メタローグ
  • 1999(平成11)年5月8日