やねのうえのくろねこ
屋根の上の黒猫

冒頭文

昭和九年の夏、横井春野君が三田稲門(とうもん)戦の試合を見て帰って来たところで、その時千葉の市川にいた令弟(れいてい)の夫人から、 「病気危篤、すぐ来い」 と云う電報が来た。横井君は令弟の容態を心配だから、夜もいとわずに市川へ駈けつけた。そして、令弟の家の門口を潜(くぐ)ろうとして、何気なく屋根の上へ眼をやったところで、其処に一匹の黒猫がいて、それが糸のような声で啼(な)いていた。瞬間横井君は、

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 伝奇ノ匣6 田中貢太郎日本怪談事典
  • 学研M文庫、学習研究社
  • 2003(平成15)年10月22日