あいよあい
愛よ愛

冒頭文

この人のうえをおもうときにおもわず力が入る。この人とのくらしに必要なわずらわしき日常生活もいやな交際も覚束(おぼつか)なきままにやってのけようとおもう。この人のためにはすこしの恥は涙を隠しても忍ぼうとおもう。 朝夕見なれしこの人、朝夕なにかしら眼新(めあた)らしきものをその上に見出(みいだ)すこの人。世間ではこの人をおとなのなかのおとなのようにいう。けれどもわたしにはこどもに見える。とい

文字遣い

新字新仮名

初出

「婦人画報」1933(昭和8)年2月号

底本

  • 愛よ、愛
  • パサージュ叢書、メタローグ
  • 1999(平成11)年5月8日