ははのへんし |
母の変死 |
冒頭文
よく肉親の身の上に変事があると、その知らせがあると云いますが、私にもそうした経験があります。 私の母は六十七歳で変死したのですが、今でもその時の事を思いだしますと、悲しくてしかたがありません。それは秋のことでしたが、母は長い間口癖のように云っていた善光寺参詣(まいり)をする事になって、喜んで家(うち)を出ましたが、出たっきり何の音沙汰もありません。もっとも母は無筆(むひつ)ですから、自分
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 伝奇ノ匣6 田中貢太郎日本怪談事典
- 学研M文庫、学習研究社
- 2003(平成15)年10月22日