うずみび
うづみ火

冒頭文

兩國といへばにぎわ敷(しき)所(ところ)と聞ゆれどこゝ二洲橋畔(けうはん)のやゝ上手(かみて)御藏(みくら)橋近く、一代の富(とみ)廣(ひろ)き庭廣き家々もみちこほるゝ富人(ふうじん)の構えと、昔のおもかげ殘る武家の邸つゞきとの片側町(かたかはまち)、時折車の音の聞ゆるばかり、春は囘向院(えかうゐん)の角力(すまふ)の太鼓夢の中に聞(きい)て、夏は富士筑波(つくば)の水彩畫を天(てん)ねむの後景と

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「女學世界第一卷第十五號定期増刊「磯ちどり」才媛詞藻冬の卷・小説」1910(明治43)年11月号

底本

  • 時代の娘
  • 興亞日本社
  • 1941(昭和16)年10月22日