かんてんじっけい
旱天実景

冒頭文

一 桑畑の中に、大きな葉をだらりと力なく垂れた桐の木に、油蝉がギリ〳〵啼きしきる午後、學校がへりの子供が、ほこりをけむりのやうに立てゝ來る——。 先に立つた子が、飛行機の烟幕だといひながら熱灰が積つたやうなほこりの中を、はだしの足で引つ掻きながら走る。ほこりは、子供のうしろに尾を引いてもん〳〵と黒くなるほど舞ひ上る。うしろの子供等は、敵機追撃だと叫びながら口でうなりを立てゝ、ほこり

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「早稲田文学」1926(大正15)年8月

底本

  • 茨城近代文学選集Ⅱ
  • 常陽新聞社
  • 1977(昭和52)年11月30日