いが、いせじ
伊賀、伊勢路

冒頭文

私には、また旅を空想し、室内旅行をする季節となつた。東京の秋景色は荒寥としてゐて眼に纏りがない。さればとて帝劇、歌舞伎さては文展などにさまで心を惹かるゝにもあらず、旅なるかな、旅なるかな。芭蕉も 憂きわれを淋しがらせよ閑古鳥 といひ、また 旅人と我名呼ばれん初しぐれ ともいつたが、旅にさすらうて、折にふれつゝ人の世の寂しさ、哀れさ、またはゆくりなく湧き來る感興を味は

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 現代日本紀行文学全集 西日本編
  • ほるぷ出版
  • 1976(昭和51)年8月1日