はなしうなぎ |
| 放し鰻 |
冒頭文
E君は語る。 本所相生町(あいおいちょう)の裏店(うらだな)に住む平吉は、物に追われるように息を切って駈けて来た。かれは両国の橋番の小屋へ駈け込んで、かねて見識り越(ご)しの橋番のおやじを呼んで、水を一杯くれと言った。 「どうしなすった。喧嘩でもしなすったかね。」と、橋番の老爺(おやじ)はそこにある水桶の水を汲んでやりながら、少しく眉をひそめて訊いた。 平吉はそれにも答えないで、おやじの手か
文字遣い
新字新仮名
初出
「民衆講談」1923(大正12)年11月
底本
- 蜘蛛の夢
- 光文社文庫、光文社
- 1990(平成2)年4月20日