じょきょうでん
女侠伝

冒頭文

一 I君は語る。 秋の雨のそぼ降る日である。わたしはK君と、シナの杭州、かの西湖(せいこ)のほとりの楼外楼(ろうがいろう)という飯館(はんかん)で、シナのひる飯を食い、シナの酒を飲んだ。のちに芥川龍之介氏の「支那游記」をよむと、同氏もここに画舫(がぼう)をつないで、槐(えんじゅ)の梧桐(ごとう)の下で西湖の水をながめながら、同じ飯館の老酒(ラオチュウ)をすすり、生姜煮(しょうがに)

文字遣い

新字新仮名

初出

「現代」1927(昭和2)年8月

底本

  • 蜘蛛の夢
  • 光文社文庫、光文社
  • 1990(平成2)年4月20日