わし

冒頭文

一 今もむかしも川崎の大師は二十一日が縁日で、殊に正五九(しょうごく)の三月(みつき)は参詣人が多い。江戸から少しく路程(みちのり)は離れているが、足弱(あしよわ)は高輪(たかなわ)あたりから駕籠(かご)に乗ってゆく。達者な者は早朝から江戸を出て草履(ぞうり)か草鞋(わらじ)ばきで日帰りの短い旅をする。それやこれやで、汽車や電車の便利のない時代にも、大師詣(もう)での七、八分は江戸の信心者(

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 光文社文庫、光文社
  • 1990(平成2)年8月20日