ねずみ

冒頭文

一 大田蜀山人の「壬戌(じんじゅつ)紀行」に木曾街道の奈良井の宿のありさまを叙して「奈良井の駅舎を見わたせば梅、桜、彼岸ざくら、李(すもも)の花、枝をまじえて、春のなかばの心地せらる。駅亭に小道具をひさぐもの多し。膳、椀、弁当箱、杯、曲物(まげもの)など皆この辺の細工なり。駅舎もまた賑えり。」云々(うんぬん)とある。この以上にわたしのくだくだしい説明を加えないでも、江戸時代における木曾路のす

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 鎧櫃の血
  • 光文社文庫、光文社
  • 1988(昭和63)年5月20日