パリのむすこへ
巴里のむす子へ

冒頭文

巴里の北の停車場でおまえと訣(わか)れてから、もう六年目になる。人は久しい歳月という。だが、私には永いのだか短いのだか判(わか)らない。あまりに日夜(にちや)思い続ける私とおまえとの間には最早(もは)や直通の心の橋が出来(でき)ていて、歳月も距離も殆(ほとん)ど影響しないように感ぜられる。私たち二人は望みの時、その橋の上で出会うことが出来る。おまえはいつでも二十(はたち)の青年のむす子で、私はいつ

文字遣い

新字新仮名

初出

「新女苑」1937(昭和12)年4月号

底本

  • 愛よ、愛
  • パサージュ叢書、メタローグ
  • 1999(平成11)年5月8日