つきのよがたり
月の夜がたり

冒頭文

一 E君は語る。 僕は七月の二十六夜、八月の十五夜、九月の十三夜について、皆一つずつの怪談を知っている。長いものもあれば、短いものもあるが、月の順にだんだん話していくことにしよう。 そこで、第一は二十六夜——これは或る落語家(はなしか)から聞いた話だが、なんでも明治八、九年頃のことだそうだ。その落語家もその当時はまだ前座からすこし毛の生えたくらいの身分であったが、いつまで

文字遣い

新字新仮名

初出

「写真報知」1924(大正13)年10月

底本

  • 影を踏まれた女
  • 光文社文庫、光文社
  • 1988(昭和63)年10月20日