かいじゅう
怪獣

冒頭文

一 「やあ、あなたも……。」と、藤木博士。 「やあ、あなたも……。」と、私。 これは脚本風に書くと、時は明治の末年、秋の宵。場所は広島停車場前の旅館。登場人物は藤木理学博士、四十七、八歳。私、新聞記者、三十二歳。 わたしは社用で九州へ出張する途中、この広島の支局に打合せをする事があって下車したのである。支局では大手町の旅館へ案内してくれたが、その本店には多数の軍人が泊り合せてい

文字遣い

新字新仮名

初出

「オール讀物」1934(昭和9)年7月

底本

  • 光文社文庫、光文社
  • 1990(平成2)年8月20日