はがき |
葉書 |
冒頭文
××村の小学校では、小使の老爺(おやぢ)に煮炊(にたき)をさして校長の田辺が常宿直(じやうしゆくちよく)をしてゐた。その代り職員室で用(つか)ふ茶代と新聞代は宿直料の中から出すことにしてある。宿直料は一晩八銭である。茶は一斤半として九十銭、新聞は郵税を入れて五十銭、それを差引いた残余の一円と外に炭、石油も学校のを勝手に用(つか)ひ、家賃は出さぬと来てるから、校長はどうしても月に五円宛(づつ)得をし
文字遣い
新字旧仮名
初出
「スバル 第十号」1909(明治42)年10月1日号
底本
- 石川啄木全集 第三巻 小説
- 筑摩書房
- 1978(昭和53)年10月25日