さっぽろ
札幌

冒頭文

半生を放浪の間に送つて来た私には、折にふれてしみ〴〵思出される土地(ところ)の多い中に、札幌の二週間ほど、慌しい様な懐しい記憶を私の心に残した土地(ところ)は無い。あの大きい田舎町めいた、道幅の広い、物静かな、木立の多い、洋風擬(まが)ひの家屋(うち)の離れ〴〵に列んだ——そして甚麽(どんな)大きい建物も見涯(みはて)のつかぬ大空に圧しつけられてゐる様な、石狩平原の中央(ただなか)の都の光景(あり

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 石川啄木全集 第三巻 小説
  • 筑摩書房
  • 1978(昭和53)年10月25日