「イーヴル」のシノニムス
「悪」の同意語

冒頭文

一 小田原から静岡へ去つて、そこで雛妓のお光とたつた二人だけで小さな芸妓屋を始めたといふ話のお蝶を訪ねよう——さう思ふことゝ、米国ボストンのFに、最近の自分の消息を知らせなければならないこと——。 この二つのことだけは、近頃彼が、自ら例へて冬籠りの地虫の心になつてゐる因循な頭に、いくらかの積極性を与へた。母や清親などゝ野蛮な争ひをした揚句、その儘周子と三歳の英一を伴れて東京へ来

文字遣い

新字旧仮名

初出

「中央公論 第四十巻第四号(春季大附録号)」中央公論社、1925(大正14)年4月1日

底本

  • 牧野信一全集第二巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年3月24日