おがわのながれ
小川の流れ

冒頭文

一 或日彼は、過去の作品を一まとめにして、書物にすることで、読みはじめると、大変に情けなくなつて、恥で、火になつた。——身も世もなき思ひであつた。 就中、純吉といふ主人公が出て来る幾つかの作品では、堕落を感じて、居たゝまれなかつた。「純吉」が、他人(ひと)をモデルにしたものでもなく、架空の人物でもなく、読む者に作者自身であるかのやうな概念を与へるのみか、作家自身の態度が充分その

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文藝春秋 第六巻第九号」文藝春秋社、1928(昭和3)年9月1日

底本

  • 牧野信一全集第三巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年5月20日