ぶとうかいよわ
舞踏会余話

冒頭文

川の向ひ側の山裾の芝原では、恰度山の神様の祭りの野宴がはじまるところでした。——月のはじめに、月毎に催される盛大な祝宴です。一ト月の間で流れをせきとめるほど川ふちに溜る製材の破片を広場の中央に塚ほどに積みあげて四方から火を放ちます。そして山ぢゆうの男達が車座になつて遠まきにこれを囲んで深更に至るまで、飲め、歌へ、踊れよ踊れ! といふ大乱痴気の限りを尽すのです。——空さへ晴れてゐれば冬の真夜中であつ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文藝春秋 第六巻第二号」文藝春秋社、1928(昭和3)年2月1日

底本

  • 牧野信一全集第三巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年5月20日