ラガドだいがくさんかんき (そのいちそうわ)
ラガド大学参観記 (その一挿話)

冒頭文

一 往来で騒いでゐる声が何うも自分を呼んでゐるらしく思はれるので私は、ペンを擱いて、手の平を耳の後ろに翳した。 「誰だな?」 私は呟いだ。私は首を傾げたが、執筆に熱中してゐる頂上だつたので、そんな騒ぎも忽ち私の仕事の世界(Flattering Phantom)と混同されてしまつて、私は眼を輝かせながら更に呟いだ。 「GOD KHONSU の帰来かな? あの瑠璃色の翼を持

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文藝春秋 第八巻第一号」文藝春秋社、1930(昭和5)年1月1日

底本

  • 牧野信一全集第三巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年5月20日