ダニューヴのはなよめ
ダニューヴの花嫁

冒頭文

一 白雲(はくうん)は尽くる時無からん、白雲は尽くる時無からん……白雲は——。 おゝ、あの歌はどこの人がうたつてゐるのであらう、何といふ朗々たる音声であらうよ、その声がそのまゝ雲のやうだ、あゝ、あゝ、あれを御覧、あれを御覧、雲が〳〵〳〵……。 そんなに思つて、うつとりと口をあけてゐると、みるみるうちに青空はるかに棚引いてゐる白い雲が、ハラ〳〵と雪のやうに飛び散つて、降つて来る

文字遣い

新字旧仮名

初出

「日本国民」日本国民社、1932(昭和7)年8月1日

底本

  • 牧野信一全集第四巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年6月20日