ダイアナのうま
ダイアナの馬

冒頭文

一 二度つゞけて土曜日が雨だつた。——三木は、雨だつてむしろ出かけたかつたが、青木からの誘ひの手紙に——よく晴れたこの次の土曜日を待つ——といふ念がおしてあるので、二度の日曜日をつゞけて全く孤独の安息で暮した後だつたせいか、今朝起きて、麗らかな空を見出した時には、思はず、 「やあ、愉快だな!」 と、中学生の遠足の日の朝の心地を思ひ出しながら、つぶやいた。「それに、月曜日は祭日では

文字遣い

新字旧仮名

初出

「報知新聞」報知新聞社、1930(昭和5)年10月4~15日

底本

  • 牧野信一全集第四巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年6月20日