やまおとことだんそうのびじょ ミッキーのジョンニー
山男と男装の美女 ミツキイのジヨンニイ

冒頭文

一 糧食庫に狐や鼬が現れるので、事務所の壁には空弾を込めた大型の短銃(ピストル)が三つばかり何時でも用意してあつたが、事務員の僕と、タイピストのミツキイは、狐や鼬に備へるためではなく、夫々一挺宛の短銃を腰帯(バンド)の間に備へるのを忘れたことはなかつた。夜、夫々のベツドに引きあげて眠りに就く時にも枕の下に、それを入れて置くことを忘れてはならない——と約束し合つてゐた。 村里から馬の

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文藝春秋 オール讀物号 第二巻第六号」文藝春秋社、1932(昭和7)年6月1日

底本

  • 牧野信一全集第四巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年6月20日